信じるものは救われない
現実的です。
心理学という観点からの人間の洞察ですが、内藤さんの本は、石井さんの「癒し系」の心理学と比べて、超現実的なのです。
やみくもに自分を信じ、他人を信じたい、と思っている人にはかなり厳しい内容ですね。
最近、世の中には「楽して生きる」「楽して儲かる」みたいな人の弱みに付け込むような情報があふれているせいで、妄想に近い期待を抱きすぎちゃって、いつも欲求不満というのが常態化している人が多いので、こういう本は一種の戒めとして必要なのだろうと思います。
ちょっと夢のない本だとは思いますが、幻想に取り付かれてしまって現実を変えられない時には、内藤さんの論理に耳を傾けて頭を冷やすことも必要でしょう。
内藤さんはこの本でしきりに人間性悪説を語っています。
内藤さんの人間性悪説ですが、「人間は放っておくと、悪いことをするものだ」ということではなく、「人間は本来、自分のことを最優先に考えるのが普通だ」というものです。だから、「やみくもに他人の好意を期待してはいけない」という結論なのです。
お金が欲しいと祈りつづければ、目の前に必要なだけのお金が現れるみたいな幻想を抱いても意味はない。
幻想を信じつづけていても、救われませんよ
ということです。
自力で道を切り開いていかないと、人生というものは思うようにならない。他人の顔色をうかがって、びくびくすることをやめられない。本を読めば、その著者の言うことをそのまま信じ込んでしまうようになる。これは危険である。したがって、まずは本書を読みながら、「この内藤ってヤツは、バカなこと、言ってらぁ」と距離をとって、けなすところから訓練してみるとよい。読者のみなさんの叩き台になら、私は喜んでなってよい。
と内藤さんも言っていますが、他人に期待するなら期待するなりの自分の行動がなければならないということですよ。それは、実は「癒し系」の石井裕之さんも同じことを言っているんですよね。
石井さんは世の中にたくさんいる親切な人たちに焦点をあてているのに対し、内藤さんは不親切で不誠実な人たちの存在を決して忘れずに、他人に過度の期待をしないように戒めているわけです。
夢を描くにはいいことだと思います。
しかし、自分の都合のよい夢ばかりを描き、現実を無視して、過度の期待をし、奇跡を待ちつづけ、挙句の果てに「いつまでたっても夢が実現しない」と欲求不満に陥るのは、本末転倒ですね。
内藤さんが言うように、現実を直視して、時には他人を上手に動かすみたいなテクニックを身につけるしたたかさも必要だとは思いますね。(でも行き過ぎて、本物の悪人になってしまうのも、それはそれで問題だと思いますが、そんな人はこんな本は読みませんね...。)
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